「甲状腺検査 
縮小?拡充?
どちらの声も聴く会」

 開催報告



縮小に「賛成か?」「反対か?」2016年10月30日「甲状腺検査・縮小?拡充?どちらの声も聴く会」を開催しました。
その報告をさせてください。

*(話し合いの要約です)太字部分を読んでいくと短時間で読めるようになっています。


福島県では今、専門家レベルや行政レベルで、検査縮小?拡充?の議論が行われています。

でも・・・当事者の声は聞こえてきているでしょうか?
私たちは”検査縮小の意見”も
”検査拡充の意見”も
”その他の意見”も

すべての声に耳を傾けたい」と願い開催しました。

会場となった郡山の総合学習センターには全部で6名の参加者、
4名が女性で、2名が男性、
福島県中通り在住の方が5名、県外の方が1名。

両方の立場に立ち耳を傾けあい
「分断」から「つながり」へ体験と気づきをわかちあわせてください。 

ー目次ー

■寸劇の感想

■県外の噂と県内のギャップ
・対話

・ロールプレイ

■縮小賛成の声
■縮小反対の声
■なんで甲状腺ガンだけなのか?
■県外の噂について
・互いの立場に立って何を感じたか?
■反対の立場に立ってみて
・振り返り

 

■初めに「甲状腺検査縮小?拡充?」の現在の状況の寸劇を上演

※約5分の寸劇の音声が、こちらをクリックすると聞けます。

https://youtu.be/cE3JTMq1k3s

以下は当日の様子を短く編集したものです。

 

■寸劇の感想

 

司会者(ファシリテーター)

劇を見てどうでしたか?

 

Aさん(女性) 今年の8月に「甲状腺検査縮小」の話を初めて聞いた時は、衝撃を受けて目がチカチカしたが、今は冷静に受け止めている。

 

B さん(女性) 初めてこの話を聞いた時は「ありえない!」と思った。 でも数か月がたち、本来だったら一生わからないまま終わってゆくようなガンをスクリーニングしてみつけて告知をすることが必要なのかな?とも感じた。

 

Cさん(女性) 2つの声が、同じぐらいの割合で自分の中にある。

 

Dさん(女性)私はこの問題には関心を持っていなかったんですが、話を聞きたいと思ってきました。

 

司会者 縮小、拡充、無関心の声もこの場にありますね。今起こっていることを大切にしながら対話を始めましょう。

 

■対話

 

Eさん(男性) 友人は「検査するたび気持ちが不安になるのはもう検査縮小もアリだと思う」と言っていた。しかし、見つかっている甲状腺ガンの中には肺に転移したものもあると県立医大が発表している。友人の気持ちもわかるが、転移する悪いガンかもしれないので「みんな検査をうけましょう」としっかり伝え、その上で一人一人の判断を尊重することが大事だと思う。

 

Cさん(女性) 新たな甲状腺検査の同意書に”検査をうけない”という選択肢のチェック項目が入った。大切なことが知らないうちにドンドン進んでいくことがショック。

 

Eさん 別の知り合いのお母さんは、甲状腺のことで騒がれると、子どもの縁談に差し障りが出るかもしれないので、検査縮小でいいといっていた。差別のことは私も気になる。そのお母さんを全面的に否定できない自分もいる。

 

 

司会者 さまざまな声がありますね。

 

■ロールプレイ

 

司会者 縮小反対の声が多いですね、縮小賛成の声を聴いてみませんか。「相手の立場に立って考えてみる」ということでロールプレイをしてみましょう。(みんな同意する)

 甲状腺検査に詳しそうな男性のEさん、縮小の要望書をだした県小児科医会の太神先生の立場で発言してくれますか?他のみなさんは、賛成、反対、無関心の立ち位置から意見を言ってみてください。

 

*以下の太神医師としてのEさんの発言は、ロールプレイという演劇的な方法を用いた想像上の太神先生の発言です。太神先生本人の発言ではないのでご注意ください。

 

■縮小賛成の声

 

太神先生役のEさん 「私は甲状腺ガンは放射能の影響で生じたのではないと思っている。根拠として韓国で行われた甲状腺検査を紹介します。

 1999年から国家的なガン検診プログラムが開始、甲状腺エコー検査が簡単になる。結果、多くの人から小さな甲状腺ガンが見つかり手術件数も増えた。しかし、手術をしても死亡率は変わらなかった。 

 じつは、老衰の方を解剖すると2割近く甲状腺に小さなガンがある。この悪さをしないガンが「潜在ガン」で発見されたのはほとんどこの潜在ガン。無用な手術をし社会問題化してしまった。 

 発生率は100万人に1人だが現代のエコー検査は何千人に1人という確率で「潜在ガン」を見つける。福島でも「潜在ガン」にすぎない。見つかれば誰だって不安な気持ちで過ごす。希望する人だけが検査する体制にしたほうがいい。

 

司会者 拡充の方に座っている方はどうですか?

 

■縮小反対の声

 

Cさん 私はとても心配している母親ですが、話を聞き「太神先生の意見も一理あるのかもしれない」と思った。でも甲状腺専門医の清水一雄医師は、最初は放射能の因果関係はないと言っていたけど今は変わってきている。清水先生は一般的には女子に多く発生する甲状腺ガンがチェルノブイリや福島では何故か男子に多く発生していることを心配している。

 それを聞くと、私も男子の母親として心配になる。息子の喉がポッコリ腫れることがあって担当医は「声帯が成長している時だから大丈夫です」と言うが不安は残る。

その不安を抑えることはできない。「不安を抑えなさい」と専門医に言われても、不安が残る。太神先生には不安をもっている母親の目線のところまで降りてきてもらいたい。

他人事じゃないんです・・・

 先生にお孫さんがいるかわかりませんが、先生が守るべき家族とともにいる時の言葉を聞かせてもらいたい。

 

太神先生役のEさん 福島で行われているような大規模なエコー検査は世界的に初めて。無理やり捜したガンの男女比がどうなるのかはどんな専門家にも「わからない」。検査を続けてほしいという不安なお母さんの気持ちはわかる。

 私はすべての甲状腺検査は必要ないと言っているのではない。検査は、しっかり続けてゆくべきだと思っている。

 世界の医学界には「無用な甲状腺検査はやめよう」という考え方があり福島にも「エコー検査をして不安な気持ちになりたくない」と思う人たちがいる。自分もだが、そういう思いの人たちのことも尊重してほしい。


■なんで甲状腺検査だけなのか?



Aさん 私は、なんで甲状腺だけなの? 他の疾病も調べたらいいのにっていつも感じている。最近、知り合いが血液検査をしたら甲状腺に橋本病の数値異常がでた。医師には「橋本病の数値異常は潜在的に持っている人がすごく多い。おばあちゃんになって死ぬまで症状が出ずに終わる人も沢山いるので、心配しすぎないで大丈夫」と言われた。その話を聞き、他の病気のこともきちんと調べてほしいと思うようになった。 学校にバスがきて血液やおしっこの検査を希望者には定期的にやるようにするのが、事故を起こした国の責任のとりかただと思う。

太神先生役のEさん ネットで血液検査で橋本病の数値異常がでたというと「放射能の影響じゃないか」と炎上する。それを読んだ人はまた不安に駆られ心身を疲弊する。私はそんな親御さんをたくさん見てきた。 Aさんの友達はきちんとした医師から情報を得てその疲弊の罠にははまらなくてすんだ。

A
さん 私も自分のバランスを保つために自分にできそうなことをアドバイスしてくれる人の情報をわたしは聞きたい。

■県外の噂について

太神先生役のEさん 例えば、さっき話題に出た福島で病気が多発していて死者が出ているという噂。福島県は震災前から脳卒中の死亡率が全国平均を上回っていた。震災前の急性心筋梗塞の死亡率は全国一位。医療関係者不足と救急車の出動件数の増加が、救命救急医療に悪影響を与え急性心筋梗塞や脳卒中による死亡者を増加させる。ネットでは社会背景が語られることはない。人は聞きたい情報ばかりを集め聞きたくない情報を知ろうとしない。

C
さん 時間が震災から止まっている人もいる。甲状腺のことも、「選択」を言うけれど自分で選択できる力を取り戻せていないお母さんが沢山いる。なのに「選択すればいい」とどんどん前に進まれると捨てられてゆく感じがする。太神先生にはその人たちのところまで降りてきてほしい。

■ロールプレイ終了 互いの立場に立ち何を感じたか?


司会者 お互いの立場にたってみてどうでしたか?

Bさん 「私は縮小反対なんだけれどあえて縮小側に立ってみると「選択制」もありな気もしてきた。
その上でやっぱり私は縮小反対だなとあらためてわかった!
ただし小学校での一斉検診をやめると「時間的にも忙しくて病院に連れて行けない」という問題がおこると思った。

Eさん(太神先生役から降りて自分に戻る) 太神先生の役になってみてわかったことがあるんです。太神先生がしきりに言うのは、メリットとデメリットという言葉。あらゆることに両面があり長所と短所があり、全部が丸になるという方法はない。
ある中通りの介護施設の施設長は、職員からの「避難」という声に葛藤したが、「国が避難を決めない限り、施設独自で避難はできない」と決断。
彼は職員に「放射能も心配だが、私たちは放射能以外も心配しなければならない。避難先での医療・生活・家族・福祉など全体を見て判断しなければならない」と言った。実際に強制避難したお年寄りの中には、環境が変わり健康を害し亡くなった方が沢山いる。
この施設長と同じく太神先生も全体を見て判断し今回の発言をしたのではないか。

Cさん 私は自分の子供さえ守れればいいとは思いたくない。 私は自主避難から戻り5年の歳月の中で少しずつ自分で決められる力をとりもどしてきたが、いまだに時間が止まり続けている人もいるのが心配。 太神先生役のEさんの話を聞き守り方がいろいろあると感じた。太神先生への不信感が増幅していたけど、このことがわかった今は太神先生とコミュニケーションがとれる気がする私がいる。

司会者  施設長も太神先生も、本当にしんどい体験をしただろう点では、お母さんたちと対等なのかもしれない。そんな風に相手の語っている背景を想像し分断している橋を渡ることで関係性を新しくつくる時がきているのかもしれない。

Eさん  そうでしょうか、向こう側にいる人たちを信じられない自分がいます。3.11直後、スピーディーやメルトダウンなど大事な情報が隠された。今回も清水医師の「放射能の影響の可能性もあるので、甲状腺検査は縮小すべきでない」という発言を福島の地方紙は記事にしない。行政やマスコミは、市民のパニックを恐れ一人一人の力を信じずに情報をコントロールしている。俺が働いていた福祉の世界では、困難な状況を乗り切る時に「一人一人の力を信じる」が大事。信じると、弱い人たちの力が引き出され、支える側も楽になるのに、福島では「信じる」と逆のことが行われている。
役をしてみて、太神先生を「信じる」自分が生まれた。一方で太神先生を「信じられない」自分もいて、混乱している。

Aさん  私も「信じる」というのが鍵だと思う。人間万事塞翁が馬と言うが、人生、何が良くて何が悪いかなんてその時にはわからないことが多い。食べ物も気をつけやれることはやっているから、あとは天にゆだねようという心境に今はなった。昔は恐れにつきうごかされ自分さえ信じられなかった。

Eさん  確かに、人生どこでどうなってゆくかわからない。。。一人一人の力を信じていれば、世の中全体もよくなっていくのかもしれない。。。その一方で信じられない自分もいる。
今、高校生の甲状腺検査の受診率がどんどん下がっている。チェルノブイリと照らし合わせると、高校生が一番リスクが高い。一人一人を信じるというのもいいけれど、現実にどんどん受診率が下がっているのだから、「ちゃんと検査しよう!」という風に、今はしておくべきじゃないかなと思う。

Dさん 高校生は受けさせなきゃって、気がしてきた。

Eさん 子どもだけじゃなく大人もです。チェルノブイリでは大人の甲状腺がんも爆発的に増えた。何故、誰も検査をうけないの?と、一人一人を信じられない自分が根強くいる。

司会者 信じることと信じられないことがくりかえしでてきています。
答えを決めないで、このわからない場所にとどまって今回の対話はここでおわります。
この甲状腺問題は、2017年1月28日に郡山でオープンフォーラムを開き、幅広くいろんな人に声かけして、話し合っていきます。先に続くという余地を残して今日は終わりたいと思います。

第2回オープンフォーラム
「甲状腺検査 縮小?拡充?無関心?
分断から対話へ・・・すべての声を聴く」やります

2017年1月28日(土)
時間:13:30~16:30(開場13:15)
場所:ミューカルがくと館 中ホール

参加自由:無料